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反日デモ報道に思うこと(あくまで個人的意見です)

 こちらでは日本のニュースと言えば、朝のNHKのニュースと、ヤフーニュースぐらいしかチェックできない。だから日本でこの問題がどのような論調で報道をされているのかよくは知らない。だけどなぜだかこの話題は、私にとって当初から聞き流すことができなかった。

 日本のメディアにアクセスできない分、逆に、アメリカメディアがどういう風に見ているのか、それを知ろうしてきた。アメリカメディアと言っても私が手にすることができるのは、ニューヨークタイムズと、ウォールストリートジャーナル(以上、日刊新聞)と、テレビ(CNN)くらいのものである。決してこれらをアメリカ一般の論調と括ることはできないことはわかっている。けれどあえて引用してみたいと思う。どのメディアもかなり正確にコトの推移を解説している(そこは省きます)。
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★ウォールストリート ジャーナル Apr 11, 2005
(北京でのデモについて)
・日本の歴史教科書、国連安全保障理事会の常任理事国入り表明などの様々な問題が要因
・中国政府はデモを、不満を持つ公衆のガス抜きの有効手段、外国政府=日本への交渉手段として利用
・同時に中国政府は公衆の感情をコントロールできず、外国の投資家の信頼を失う危機にある
・中国の不服申し立ての要因は、領土紛争=日本との経済的、外交的競争力の激化にもある
・反日文化(サブカルチャー)が、国営メディアやインターネットによって広まっている
・日本に対して中国政府は真摯な態度と適切な方法でこの問題を取り扱うべきだと反論

★ニューヨーク タイムズ Apr 11&18, 2005
・油田開発と中国側の主張する歴史の曲解が要因
・中国政府は日本製品のボイコットやデモ行進を容認することで反日行為を高ぶらせている
・中国外相は周辺諸国に対する真摯な謝罪と賠償がなければ常任理事国入りは阻止すると言明
・専門家はこの動きを外交上のパワープレイと分析
・短期的な観点では、反日行為は外交駆け引きを麻痺させる
・1999年以来、両国トップの相互訪問は実現していない
・反日デモは、1989年(天安門事件)以来、もっとも長い公共デモになっている。当局は警察や軍隊を動員するものの、暴力的になるのを阻止していない

★CNN Apr 16, 2005
・日本政府は中国に対し、国交回復以来、少なくとも17回は謝罪している
・日本は現在、UNや世界銀行への寄付も大きく、モデル国として認められている。
・しかし教科書問題は根深い敵意を悪化させる。中国主要都市の電話調査によると、ほぼ全回答者が教科書は侮辱的であり、オープンな挑発だと答えている
・この緊張は前世紀の日本軍による中国本土の侵攻と侵略に由来する。とくに中国側は「南京大虐殺」や従軍慰安婦問題(東京高裁は否定)を挙げている
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 この問題で、私が悲しく思うのは、日本内部での論争や議論が、中国側にも、海外メディアにも伝わっていないことである。

 数年前、新しい歴史教科書を作る会が発足し、「歴史を修正する」として様々な主張を行ったとき、国内では様々な反発、議論が起きた。東京高裁では従軍慰安婦訴訟は敗訴したが、研究者やさまざまな人権保護グループが草の根的に「元慰安婦」をサポートしている。実際、私はそういう人を沢山見てきた。
 これらの人々は必ずしも、「日本国民」として責任を感じてやっているわけではないようにみえる。政府の枠組みではできないことを、自分たちの意思でやろうとしている。‘ナショナルなもの’に幻想を抱かず、いわば、「日本国民」という枠組みを外そうとしながら…。日本国民であることを強調する「作る会」とは対極にいる人々だ。

 けれども、新しい歴史教科書の検定通過、従軍慰安婦問題の却下などのオフィシャルな側面が取り上げられることで、それに異を唱える人々や草の根の運動の存在はかき消される。短絡にも、日本政府の決定が日本人の総意ととられてしまう。
 だからこそ、首相の靖国参拝には慎重になってもらいたいし、国旗国歌の義務化や、昭和の日の制定など、右傾化ととられかねない動きには、もっと慎重にならねばならなかったと思うのだ。もし中国や韓国がそれらを外交カードとして使っているとしたら、なおさら…。

 中国政府の言論統制、情報操作にも違和感を感じる。情報操作をしておきながら、デモは中国国民の自然な感情の表れだ、というのはおかしい。
 ナショナリズム=愛国心をあおるだけではなく、国民それぞれが、自国を批判的に省みる姿勢を許容する寛容さが、中国にも必要だと私は思うのだが…。

 結果的に今回の一件は、国内的には、反中国感情の高まりによって「歴史修正派」の勢力拡大につながるのだろうか?そしてますますナショナリズム的運動が増幅していくのだろうか。皮肉にも、まるで中国がお膳立てしたような形で…。
 とにもかくにも一日も早く事態が収束しますように。
by columbus59 | 2005-04-19 17:21 | ひとりごと | Comments(0)
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