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半世紀以上前に

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朝起きると、外は雪が積もっていた。この冬初の積雪。










 近頃、話題を独占している感のあるライブドア。
このニュースを聞いたとき、思い出したことがある。今日はそのことについて書いてみようと思う。
 
 「光クラブ事件」というのをご存知だろうか?
時代は戦後すぐの昭和24年。ひとりの実業家が服毒自殺をした。彼の名前は山崎晃嗣、27歳、現役東大生社長だった。
 山崎は千葉の医者の名家に生まれ、東大法学部に進学するが、戦争により学徒兵として陸軍に入隊。当時の東大生といえば、今とは比べ物にならないくらい貴重な存在。エリート仕官として好遇されるものの、上司による屈辱的な裏切り事件を経験し、情や義理といった人間的感情を嫌悪するようになる。
 終戦後、復学。非常に優秀である半面、極度の完ぺき主義者であり、合理主義者でもあった彼は、緻密すぎる日記をつけるなど特異な一面を持ち合わせていたという。

 そんな彼が、株への興味の延長で始めたのが、「光クラブ」という名の高利貸し業だった。月13%と破格の配当金を謳って集めた資金により、会社は急成長。半年もたたないうちに一大企業へと成長した。しかし、法定利息を超えた配当は、警察に目をつけられ、彼は事情聴取をうけることになる。しかし、そこは並以上の頭脳の持ち主。法廷論争を繰り広げた山崎は処分保留で釈放される。留置所では、「人生は劇場だ ぼくは自分で脚本を書き、演出し主役を演ずる その場合、死をも賭けている もっとも、死そのものを僕はそれほど大仰に考えていませんけどね」という名言を残す。

 しかし、彼にとってはうまく切り抜けたつもりが、逮捕という事実そのものに動揺した債権者はパニックに陥り取り付けに動いたことから、山崎は行き詰ることになる。彼の劇場は、結局彼のものでしかなく、一般人には参加できないものだったのだ。
 
 支払い期限の前夜、追い詰められた山崎は、言葉通り青酸カリを飲んで自殺を決行する。残された遺書もまた特異なものだった。死体の取り扱い方への注文、青酸カリで自殺したとの報告、遺灰の処分の仕方の指示。
 なぜ死んだのか? 行き詰ったからでも、債権者への謝罪でもないと綴られている。「契約は生身の人間と人間に交わされるもので、物体である死体には適用されないから」なのだそうだ。
「高利貸しは冷たいというが、死体をさわればかし」、「賃借法清算カリ自殺」などの記述も・・・。言葉遊び(駄洒落?)まで披露する余裕があったのか。毒を飲んだ時間も秒単位まで正確に遺書に記録。徹底している。

 結局、死ぬその間際の瞬間まで、自分の納得のいくシナリオで、独り舞台で演じきった山崎だった。

さて、ホリエモンはどのように決着をつけるのだろう?
by columbus59 | 2006-01-21 22:52 | ひとりごと | Comments(2)
Commented by さっかん at 2006-01-23 17:58 x
高木彬光さんの「白昼の死角」は,光クラブ事件をモデルにしてるといわれてます。
かなり以前に読んだので,記憶があいまいですが‥‥。

ちなみに,高利貸しは,明治時代は「アイス(アイスクリーム)」と呼ばれたそうです。
高利貸し > 氷菓子 > アイスクリーム という関係でしょうか。
さらにちなみに,赤川次郎さんは,「わが子はアイス・キャンデー」という作品で,アイス・キャンデー(氷菓子)を高利貸しの意味で使ってます。
なんでも,赤川さんは自分で考えたらしく,そういう言葉のセンスは素敵です。

自分は,国語辞典を読んでいた高校生のときに,辞典の中で見つけました。
三省堂の新明解国語辞典(第二版)です。
10年ぐらい前のことでしょうか(ウソ)。
Commented by columbus59 at 2006-01-23 22:54
さっかんさん、こんにちは~。
『白昼の死角』は映画化もされたんですか?ぜひ読んでみたいです。
山崎をモデルにした小説、結構あるみたいですね。三島由紀夫の『青の時代』など・・・。それだけ、影響力のある事件だったんでしょうね。
高利貸し=アイスクリーム。なるほど☆山崎の遺書はそれを踏まえたうえだったんですね。
江戸時代なんかも庶民の言葉遊び能力はすごいと感心しますが(川柳とか)、大正・昭和なども粋な言葉遊びがあったみたいですね。広告などにももじられていたり。

>10年ぐらい前のことでしょうか(ウソ)。
さっかんさん、私と同世代になっっちゃいますよ(うそ・笑)。
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